入塾時の面談で「一番苦手な教科は社会」と答えたその生徒さん。
学校のテストでは50点を下ることも少なくなく、どう勉強していいのか、社会という教科の性質がつかめず混乱している様子でした。
とはいえ、最も苦手な社会から授業をしていくわけではありません。
積み上げが必要な数学、英語の学習を通して読み取る力や論理的に考えることを身に着けることが先です。ですので、社会の勉強を始めたのはテストの2週間を切ってからでした。
多くの親御さんは「社会は暗記だ。」と言います。
学校の先生は「社会は暗記じゃない」と言います。
実際には、どちらも大切です。
きちんと言うと、理解した上で覚えることが必要なのです。
脈絡のないようなことを覚えるのは苦痛ですが、腑に落ちていることを覚えることは難しいことではありません。
当塾の社会の授業では重要語句を文章、言葉を並べて説明するのではなく、写真とイラスト、地図、時には動画を使って説明します。
例えば、養殖業と栽培漁業を学習するとき。こんな風に説明します。
1.養殖業と栽培漁業は似ているから間違う人が多いよー。ちゃんと区別するんだよー。とまずは注意喚起。生徒たちの関心を引きます。
2.いけすで育てた大きな魚を大人がすくい上げる写真を提示。「大きくなるまでいけすで育てて、そこから出荷するのが養殖業」と説明する。
3.栽培漁業の説明では、放流している写真を提示。「敵に襲われない大きさになるまで人が育てて、大きくなったら自然界へ放す。これが栽培漁業」と話します。
私が言葉を尽くして説明するよりも、写真で見せて補足するほうが脳へ定着します。
百聞は一見に如かずなのです。
このように重要語句1つ1つを丁寧に写真とともに説明します。
もちろん、授業の準備に時間がかかります。
授業時間よりも2~3倍の準備時間が必要です。
しかし、この手間を省くと、生徒の学力は上げられません。
生徒が理解しやすいように授業を作ることが私の仕事だとしたら、その説明を聞いた後に覚えるのは生徒の仕事です。そこをおろそかにしては子どもたちの学力を上げることはできません。
生徒にもよく言います。「塾に入ったからと成績が上がるわけではない。」と。
人間は忘れる生き物。
その時はきちんと理解したとしても、繰り返さなくては忘れてしまいます。
先に紹介した、社会がもっとも苦手な生徒は、この覚える作業をきちんとしました。
一度で覚えられるわけではありませんでした。記憶力が優れているわけではなく、教えたことを忘れ、もう一度教え、それを繰り返しているうちに、スラスラを答えが浮かんでくる状態までもって来れました。
この “スラスラ答えが浮かんでくる” 感じをつかめたらしめたもの。
なぜなら、この感覚はとても気持ちの良いものなので、次のテストでもこの感覚をまた味わいたいがために、勉強をしようと思うからです。
指導者としては、このスラスラ解ける感覚をつかませることが非常に大事だと私は考えています。
社会が一番苦手だったその生徒さんにはテスト前日には、社会の試験範囲のプリント、ワークを一気に解かせました。テスト問題も解かせました。
その時点でスラスラ解ける段階にあったので、良い点がとれるだとうとは思っていましたが、何と95点! 学年でトップの点数でした。
その子の笑顔が頭に焼き付いています。
指導している側としても嬉しかったです。
それは高得点だからではありません。
その子が苦手意識を克服し、自分に自信を持てた事が嬉しいのであり、
やればできるという感覚を苦手教科に対しても抱けたことが嬉しいのであり、
社会の勉強の仕方が分かったことが嬉しいのです。
生徒たちが将来ここで学んだことをもとに人生を切り開いていけられるように今後も指導していきます。